【9】黒から白は、生まれない

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「研究室、狭いだろ。これでも12畳くらいあるんだけどな」 そう言うと、彼女はキラキラと目を輝かせ、頷いた。 どうやら普段は立ち入ることのない空間に興味津々のようだ。 「ここが春樹さんの職場なんですね」 「そうだな。基本的にここにいるから、暇な時は遊びにおいで」 「え、いいんですか?」 「優愛は特別な。でも正木とか、うるさい奴は連れてくるなよ」 そう微笑み掛けると、彼女は何故かバツが悪そうに目線を逸らした。 「あの……春樹さん」 「ん?」 「この前の球技大会の時もそうですし、わたしをあんまり特別扱いすると、その……変な噂が立っちゃいますよ?」 そう言う彼女の眉根が微かに寄せられているのを見て、言葉に隠された想いを察した。 じわりと染みる悦楽に耐え切れず、俺は意地が悪くも聞き返す。 「……変な噂って?」
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