【9】黒から白は、生まれない

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目を見開き、真っ赤に染まった彼女の顔。 望んだ通りの反応に満足して、頭を撫でた。 「わ、わたしは真面目に話してるんです! からかわないでください……」 今まで幾度と無く彼女を苛めてきたが、ここまで必死に抵抗するのは初めてだ。 とてつもなく可愛く思うと同時に、先程思い返していた君島さんの言葉、その続きが頭を過る。 『つべこべ考えずに自分のモノにしちゃえばいいのに』 ――本当に、そうしてしまおうか。 この反応を見れば、彼女が俺に対してどんな想いを抱いているかなんて、考えずとも瞭然なのだから。 「今は彼女はいらないって言っただろ」 彼女の髪に、指を滑らせる。 髪越しにその小さな耳に触れ、小さく跳ねる彼女の身体。 あの時の記憶が蘇り、遂に箍(たが)が外れる音を聞いた。
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