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「俺は」
ガラッ
「藍崎さーん! お待たせっ! ……って、あれ?」
――まるで、見計らっていたかのようなタイミング。
あぁ、こういうのを世間一般では
「お決まり」と言うんだな。
「なに、なに、お取り込み中だった?」
教授は目を丸くし、俺の顔と、彼女の髪に触れた俺の手を見て、再び目を丸くした。
幸い彼女は教授に背を向けている状態だったので、その真っ赤な顔を見られる事はなかったが……
「いえ。お待ちしてましたよ、教授」
この瞬間、俺は「バレたな」と確信した。
俺が自ら女性に触れる画など、教授にとってはレアもレアだ。
「……そうかい?」
教授は全てを理解したのかしていないのか、首を傾げてへらっと笑う。
対して俺は、消化不良からくる苛立ちと、意地悪なカミサマへの嫌味を満面の笑みに代えて、教授へと返した。
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