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「じゃあ、面談を始めようか」
「はい」
――冷静になって考えてみると、俺は結果的に、教授に助けられたのかもしれない。
「大学生活、慣れてきたかな?」
「はい。友達もできて、毎日楽しいです」
もしあそこで教授が現れていなければ、俺は確実に彼女に想いを伝えていた。
それまで必死に積み上げてきた苦労も、無に帰する所だった。
「藍崎さんは君島さんと仲良しなんだよね?」
「はい! コトちゃんは本当に優しくて強くて、私はいつも頼りっぱなしで」
俺が望み、手を伸ばせば、彼女を手に入れる事が出来る。
ついさっきそれを確信して、俺は自制を手放した。
正しさなど放棄して、今後の彼女の人生も全て俺のモノになってしまえばいいという、利己的な欲に負けたのだ。
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