【9】黒から白は、生まれない

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「――じゃあ、本題に戻ろっか。藍崎さんは将来の夢とか目標はある?」 「将来……」 どうやら満足したらしい教授は、まともな面談を再開した。 彼女は返答に困っているのか、ミルクコーヒーを一口飲み込むと、視線を泳がせる。 将来。 恐らく、彼女が一番目を背けたかった話題だろう。 彼女は祖母に恩を返す、その為だけに大学進学を選んだ。 そして祖母を亡くすと同時に、将来の目標までもを失ってしまった。 「いいんじゃないかな?」 「え?」 「僕は自分が大学生のとき、大学の先生になりたいだなんてこれっぽっちも思ってなかったよ。 研究が好きで、好きで、そればっかやってて、気付いたらこうなってた! 今は何も見えなくても、自ずと分かるものだよ。やるべきこととか、何がしたいかだとか」 「……はい」 教授の言葉に、彼女は素直に頷く。 その目は微かに潤んでいた。
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