6456人が本棚に入れています
本棚に追加
「――じゃあ、本題に戻ろっか。藍崎さんは将来の夢とか目標はある?」
「将来……」
どうやら満足したらしい教授は、まともな面談を再開した。
彼女は返答に困っているのか、ミルクコーヒーを一口飲み込むと、視線を泳がせる。
将来。
恐らく、彼女が一番目を背けたかった話題だろう。
彼女は祖母に恩を返す、その為だけに大学進学を選んだ。
そして祖母を亡くすと同時に、将来の目標までもを失ってしまった。
「いいんじゃないかな?」
「え?」
「僕は自分が大学生のとき、大学の先生になりたいだなんてこれっぽっちも思ってなかったよ。
研究が好きで、好きで、そればっかやってて、気付いたらこうなってた!
今は何も見えなくても、自ずと分かるものだよ。やるべきこととか、何がしたいかだとか」
「……はい」
教授の言葉に、彼女は素直に頷く。
その目は微かに潤んでいた。
最初のコメントを投稿しよう!