【9】黒から白は、生まれない

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教授を送り届けた後、自宅へと向かう。 彼女を助手席に乗せるのは久々で、ハンドルを握る手には妙に力が入る。 店に戻ってきた俺に対する二人の反応を見て、確信した。 彼女は、俺の過去の一部を知った。 「わたしは春樹さんが冷たい人だなんて感じたことないです。春樹さんはいつも優しいですし……」 俺は今から、必死になって作り上げた偽りの俺を、自らの手で排除しようとしている。 「……春樹さん」 あぁ、本当に怖い。 「もし嫌だったら答えなくていいんですけど……以前好きだった人って、どんな人だったんですか?」 不整脈を疑う程、不快に刻まれる鼓動。 動揺を悟られまいと、笑顔を取り繕い、余裕を演じた。 彼女に本当に聞きたいのか、試すように問うてみた。 すると彼女は躊躇いつつも、聞きたいとハッキリ答えた。 ここにはもう、出会った頃の臆病な彼女はいない。 意見を言うようになり、意思と選択を持つようになった。 心から、嬉しいと思う。
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