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「正直、優愛にこの話をするのは怖い」
だからこそ、余計に話したくないと思った。
今の彼女ならば「家を出て行く」という選択も、出来てしまいそうな気がしたから。
「俺の過去なんて、綺麗なもんじゃないから。
優愛はきっと俺を軽蔑する。それでも、聞きたい?」
彼女の答えなど分かっていた。
それでも俺は、ここで最後の足掻きをしたかったのだ。
万が一にでも、気がそがれてくれたら、と。
「聞きたいです」
そう答えた彼女の、一路さに
遂に俺は、腹をくくった。
目を瞑り、呼吸を整える。
最悪な未来を想像しながら
最低な過去を遡る。
「俺の好きだった人は、高校の養護教諭。彼女は結婚してた」
そう言った時の、彼女の目を
俺は一生、忘れない。
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