【9】黒から白は、生まれない

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「正直、優愛にこの話をするのは怖い」 だからこそ、余計に話したくないと思った。 今の彼女ならば「家を出て行く」という選択も、出来てしまいそうな気がしたから。 「俺の過去なんて、綺麗なもんじゃないから。 優愛はきっと俺を軽蔑する。それでも、聞きたい?」 彼女の答えなど分かっていた。 それでも俺は、ここで最後の足掻きをしたかったのだ。 万が一にでも、気がそがれてくれたら、と。 「聞きたいです」 そう答えた彼女の、一路さに 遂に俺は、腹をくくった。 目を瞑り、呼吸を整える。 最悪な未来を想像しながら 最低な過去を遡る。 「俺の好きだった人は、高校の養護教諭。彼女は結婚してた」 そう言った時の、彼女の目を 俺は一生、忘れない。
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