【9】黒から白は、生まれない

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――9年前、高校2年、春。 「だりー……」 煩いピンク色も、一様に浮き立つこの空気も、目障りでならない。 春。 俺の一番キライな季節。 「遠山くん、いるー?」 年季の入った音を立てて開く扉。 現れたのは、紺色のブレザーを纏った女。 校則丸無視のスカート丈が、その品格を語っている。 「いるって分かっててきたんだろ」 「あ、バレた? 体育館にいないからここだと思って」 女は悪びれた様子もなく、後ろ手に鍵を掛けた。 ここは去年廃部になった写真部の元部室。 今は空き部屋、俺のテリトリー。
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