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4月半ば。
煩いピンクは地面の片隅で、濁った茶色に変わった。
その日、登校中に他校の生徒に絡まれて、唇を少し切った。
面倒だが化膿するともっと面倒なので、仕方なく保健室へと向かい、扉を開けた。
「おはよう……あら、喧嘩かな?」
そこにはいつもの口煩いおばちゃんがいるとばかり思っていたから、少し驚いた。
「……アンタ誰」
「あ、始業式でちゃんと話聞いてなかったなー? 今年赴任してきた神林(かんばやし)です。よろしくね」
保健室にいる先生といえば、小学校でも中学校でも、おばちゃんと決まっていた。
だから神林とかいうこの人は、特別に若く見えた。
「で、その唇どうしたの。喧嘩だよね? まったくもう、やんちゃねー」
……口煩いのは、年齢に関係なく決まりらしい。
「おいで、消毒するから」
「いい、自分でやるから貸して」
「ダメですー! これは先生のだから渡せません!」
――あぁ、うざい。
それがこの人の、第一印象だった。
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