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大嫌いな名前を呼ばれた。
しかし不思議と不快ではなく、やはりむず痒さを感じた俺は、出来る限り下を見る。
「……こいって言われると、きたくなくなるよな」
と言いつつ、俺が再び保健室へと足を運んだのは、この3日後。
またしても絡まれた事による喧嘩で、やはり唇を少し切った。
その人は俺の不興顔を見て、ふわっと笑う。
「おかえり」
――以降、俺は度々保健室へ足を運んだ。
特に意図や理由があった訳ではない。
ただ、暇を持て余した時には自然と足が向く。
気が付けば、俺の定位置は侘しい一人掛けのソファから、回転式の安っぽい音のする丸椅子へと変わっていた。
会話を重ねて、少しずつその人の事を知っていった。
年齢は27。
身長は158センチ、体重は……教えてくれなかった。
趣味はコンビニの新作菓子を漁る事。
そして少しばかり驚いたのが、去年結婚したばかりの新妻であるという事。
その人は、指輪をしていなかった。
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