【9】黒から白は、生まれない

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その日も、朝から飽きる程の雨が降っていた。 気だるい気分を晴らす為に、いつもの様に保健室へと向かう。 「ハルくん、またサボり?」 「授業つまんねーし、ねみーし」 「もう。君のサボりを容認してるってバレたら、私クビになっちゃうわー」 おどけたように笑うその人は、どこか昨日と違って見えた。 何でだろうかと疑問に思い、近付き、その顔を覗き込む。 「目、腫れてね?」 重みを含んだ瞼と、充血の目立つ目。 前夜泣いたのだろうという事は見て取れた。 流石に今日くらいは突っ込んで聞いてみようかと思いつつ、一先ず定位置の丸椅子へと向かう為、踵を返す。 「ハルくん」 一瞬の出来事だった。 俺の名を呼ぶ声と、ギシリと椅子が鳴る音の、その後に 「ツラい」 柔らかな温もりが、背中を覆う。
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