【9】黒から白は、生まれない

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「ねぇ、どうして自分の名前が嫌いなの?」 「春が嫌いだからだ」 「綺麗な季節じゃない」 「だから嫌いなんだ。それに俺、秋生まれなんだよ。なのに春っておかしいだろ?」 「きっと意味があるんだよ。つけてくれたのはお父さん? お母さん?」 「知らねーし興味もねーな」 「もう、強情ね」 情事の後、腕に女を抱いたまま会話をする事など、今まで一度もなかった。 もちろん俺はすぐにベッドを抜けようとしたのだけれど、もう少しこのままがいいと言われたので、今に至る。 「ハルくん、優しいね」 「は? どこが」 「慰めてくれたから」 互いの鼻が触れそうな距離で、その人は俺を見つめた。 沈黙の流れと共に、その瞳が濡れていく。 「ありがとう」
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