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「ねぇ、どうして自分の名前が嫌いなの?」
「春が嫌いだからだ」
「綺麗な季節じゃない」
「だから嫌いなんだ。それに俺、秋生まれなんだよ。なのに春っておかしいだろ?」
「きっと意味があるんだよ。つけてくれたのはお父さん? お母さん?」
「知らねーし興味もねーな」
「もう、強情ね」
情事の後、腕に女を抱いたまま会話をする事など、今まで一度もなかった。
もちろん俺はすぐにベッドを抜けようとしたのだけれど、もう少しこのままがいいと言われたので、今に至る。
「ハルくん、優しいね」
「は? どこが」
「慰めてくれたから」
互いの鼻が触れそうな距離で、その人は俺を見つめた。
沈黙の流れと共に、その瞳が濡れていく。
「ありがとう」
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