【9】黒から白は、生まれない

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最初は俺の嫉妬心を煽る為なのかとも思ったが、それがただの自惚れであると確信したのは、夏休み明けの事。 会いたくて仕方がなかった俺に対して、その人は 「夏休み、旦那と旅行に行ったの」 と、少し焼けた肌をチラつかせて、笑った。 その日は少し、乱暴に抱いた。 始まりの合図はなかったけれど、溜まっていた欲と、嫉妬心をぶつけずにはいられなかった。 その人に言われたから、喧嘩もやめて 無理やりは嫌だと言われたから、優しく抱くように努力してきたのに。 俺がその人の為に変わろうとすればするほど、一方通行の想いが鮮明になって 悔しくて、惨めで。 どうしたら俺を好きになるのか どうすれば俺は旦那に勝てるのか その人を手に入れる為には何をすれば良いか、そればかりを考えるようになった。
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