【9】黒から白は、生まれない

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――雲ひとつ無い秋晴れの日。 2限目、俺のクラスの授業は体育。 グランドに面したこの保健室。 5センチ程、隙間の開いたカーテンからは、光が漏れる。 「美緒さん」 「ちょ、ハル……んンッ」 保健室の真ん中で、その人を抱き締め、長く深い口付けを落とす。 耳に響くのは、厭らしい水音と 授業の終わりを知らせるチャイム。 上から斜めから、角度を変え、その身体を拘束し続け、遂にその時はやって来る。 隙間から漏れる光を遮断するのは、人影。 その見開かれた目と視線を通わせて、俺は密かに目を細めると、唇を離す。 「俺、本気だから」 何度目かの告白に、その人は艶に染まった唇を、きゅっと結ぶ。 「……ありがとう。嬉しい」 揃って校長室に呼び出されたのは、それから2日後の事だった。
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