【9】黒から白は、生まれない

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深夜近くに帰宅した親父に、出し抜けに一発殴られた。 「春樹、お前人様の嫁に何をした」 「……あ?」 俺は鉄の味を拭い取ると、その胸ぐらを掴む。 「貞操の欠片もねーてめーに説教垂れる資格があんのかよ」 「確かに俺は色んな女と遊んできた。だがな、人様のモノには絶対に手を出さない。その理由が分かるか?」 親父は眼光を細め、低い声を吐き出す。 「奪う行為は一利も生まないからだ。 てめーのくだらない独占欲がひととき満たされるだけで、巻き込まれた周りの人間はいい迷惑なんだよ。 もちろんお前だけが悪いとは言わない。 だがお前の取った行動で、お相手の女性は職を失った。 分かるか春樹、お前が奪ったんだよ。 金も地位も権力もなければ、賢く生きていくことも出来ないお前が、どうやって責任を取るつもりだったんだ? 一人の女を幸せに出来ると、本気で思っていたのか? 自惚れるな。 お前は責任を取ることすら許してもらえない、ただのガキなんだよ」
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