6456人が本棚に入れています
本棚に追加
深夜近くに帰宅した親父に、出し抜けに一発殴られた。
「春樹、お前人様の嫁に何をした」
「……あ?」
俺は鉄の味を拭い取ると、その胸ぐらを掴む。
「貞操の欠片もねーてめーに説教垂れる資格があんのかよ」
「確かに俺は色んな女と遊んできた。だがな、人様のモノには絶対に手を出さない。その理由が分かるか?」
親父は眼光を細め、低い声を吐き出す。
「奪う行為は一利も生まないからだ。
てめーのくだらない独占欲がひととき満たされるだけで、巻き込まれた周りの人間はいい迷惑なんだよ。
もちろんお前だけが悪いとは言わない。
だがお前の取った行動で、お相手の女性は職を失った。
分かるか春樹、お前が奪ったんだよ。
金も地位も権力もなければ、賢く生きていくことも出来ないお前が、どうやって責任を取るつもりだったんだ?
一人の女を幸せに出来ると、本気で思っていたのか?
自惚れるな。
お前は責任を取ることすら許してもらえない、ただのガキなんだよ」
最初のコメントを投稿しよう!