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親父は平気で外に女を作るような、どうしようもない男だ。
なのに、何故、何も言い返せない。
……俺が、俺の独占欲が
あの人の、美緒さんの、人生を奪ったのか……?
「頭冷やせ、このクソガキが」
親父は俺の腕を引き剥がすと、睨みを残して去って行った。
今まで何度も警察沙汰を起こしてきたが、親父に殴られる事など一度もなかった。
「あまり手を焼かせるな」そう言ってまた俺に金を渡す、それで終わりだった。
――俺は今、生まれて初めて親父に
叱られた、のか。
「……は、はは」
下唇の端に触れる。
かつてあの人が優しく治療してくれていたその場所に、じん、と痛みが広がった。
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