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「でも、その人も、きっと春樹さんを好きだったはずです……」
こうなる事が怖かった。
彼女は世の中の不純を知らなすぎる。
「あの人にとっての俺は、ただ寂しさを埋めてくれるだけの存在だったんだよ」
初めて彼女に向ける、威圧を含めた声色。
胸が痛む一方、強く否定しなければ彼女の真白に侵食されてしまう。
「で、も、春樹さんのことを好きじゃなかったら、きっと拒否してたはずで……っ」
「世の中、愛がなくてもそういうことが出来る人もいるんだよ」
……頼むから、俺を肯定しないで欲しい。
「例えそうだったとしても春樹さんは違っ」
「優愛、俺もそっち側の人間だよ」
その優しさに縋りたくなってしまう。
ああなったのは俺だけの責任ではないのだと
過ぎた若気の至りだったのだと
「可哀想な自分」を、庇いたくなってしまう。
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