【9】黒から白は、生まれない

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「でも、その人も、きっと春樹さんを好きだったはずです……」 こうなる事が怖かった。 彼女は世の中の不純を知らなすぎる。 「あの人にとっての俺は、ただ寂しさを埋めてくれるだけの存在だったんだよ」 初めて彼女に向ける、威圧を含めた声色。 胸が痛む一方、強く否定しなければ彼女の真白に侵食されてしまう。 「で、も、春樹さんのことを好きじゃなかったら、きっと拒否してたはずで……っ」 「世の中、愛がなくてもそういうことが出来る人もいるんだよ」 ……頼むから、俺を肯定しないで欲しい。 「例えそうだったとしても春樹さんは違っ」 「優愛、俺もそっち側の人間だよ」 その優しさに縋りたくなってしまう。 ああなったのは俺だけの責任ではないのだと 過ぎた若気の至りだったのだと 「可哀想な自分」を、庇いたくなってしまう。
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