【9】黒から白は、生まれない

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「じゃあ、なんで……」 左視界の端に、前のめりになって俺の横顔を見つめる彼女の姿を感じた。 彼女は俺の過去に嫌悪を抱くどころか、背徳の闇から救おうとしてくれている。 語る前は、あんなにも嫌われる事が怖かったのに。 彼女の無垢な涙を見てしまったら、自分よりも大事なこの真白を汚す事のほうが、何倍も怖くなった。 「優愛に嫌って欲しいんだよ。過去の俺を」 俺は、全ての悪から彼女を守ると決めたじゃないか。 「最低な奴だって思って欲しい。そしたら俺も、優愛も、楽なんだよ」 「ら、く……?」 「そう。俺は優愛が思うほど綺麗な人間じゃないんだって、知って欲しい」 100の色に染まる事の出来るキャンバスを、たった1の黒に染める選択は、即ち彼女の人生を奪う事。 例え彼女に嫌われたとしても 彼女をひと時傷付ける事になろうとも 今度こそ、大切な人の大切な人生を守れるのであれば ……本望だ。
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