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「じゃあ、なんで……」
左視界の端に、前のめりになって俺の横顔を見つめる彼女の姿を感じた。
彼女は俺の過去に嫌悪を抱くどころか、背徳の闇から救おうとしてくれている。
語る前は、あんなにも嫌われる事が怖かったのに。
彼女の無垢な涙を見てしまったら、自分よりも大事なこの真白を汚す事のほうが、何倍も怖くなった。
「優愛に嫌って欲しいんだよ。過去の俺を」
俺は、全ての悪から彼女を守ると決めたじゃないか。
「最低な奴だって思って欲しい。そしたら俺も、優愛も、楽なんだよ」
「ら、く……?」
「そう。俺は優愛が思うほど綺麗な人間じゃないんだって、知って欲しい」
100の色に染まる事の出来るキャンバスを、たった1の黒に染める選択は、即ち彼女の人生を奪う事。
例え彼女に嫌われたとしても
彼女をひと時傷付ける事になろうとも
今度こそ、大切な人の大切な人生を守れるのであれば
……本望だ。
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