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俺の想い人が既婚者であったと知った時の彼女の顔が、頭から離れない。
汚れなき真白に、黒が一滴落とされる。
その瞬間を、確かに感じた。
白は全ての始まりで、どんな色にも染まる事の出来る、唯一無二の色。
俺も物心がつく前は、無垢な白だった筈だ。
白から黒は生まれても、黒から白は生まれない。
それは誰にも覆す事の出来ない世の理(ことわり)。
ならば何故カミサマは、俺と彼女を引き合わせたのか。
例え彼女の真白に触れたところで、俺はもう、白には戻れないというのに。
「……正しさなんて、分かんねーよ」
目を瞑り、背中を布団に預けた。
沈むマットレスに疲労が溶けて、ぼんやりと遠のいていく意識。
暫く彼女とは距離を置こう。
俺の黒が、これ以上彼女を汚す事のないように
きっかけを、つくらないように……
これ以上
自分勝手に、愛してしまわないように――……。
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