【10】彼女に言えない事がある

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俺は、彼女に言えない事がある。 「久しぶりだな、遠山」 「あぁ、すっかりデキる男になったな、木崎」 「まだまだこれからだよ」 久々の再会を祝したグラスは、キンと心地良い高音を立てた。 昨日梅雨明けが発表されたものの、本格的な夏を間近に控えたこの時期は、じっとりと蒸し暑い。 しかしそれがまた、喉を潤すアルコールを美味くする。 「遠山は今年の春から正式な助教になったんだよな。どうだ、慣れたか?」 「上司が宮守教授だからな、嫌でも慣れるよ」 「はは、相変わらず元気そうだな、教授も」 唯一無二の友人に呼び出されたのは、都内某所のビアガーデン。 平日の夕暮れ時という事もあり、騒がしさもなく意外にも快適だ。
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