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「木崎は相変わらず忙しいみたいだな」
「まぁな。最近やっとプロジェクトを任せてもらえるようになったよ」
「もう人の上に立ってるのか」
「あぁ。お陰でろくに寝る暇もないけど、今日は先方に会食をドタキャンされてな。そこで急遽、お前を飲みに誘ったという訳だ」
爽やかな笑みは木崎の武器だ。
「コンサルタント」という職業は、木崎にとっての天職であると言えるだろう。
「ところで遠山、最近あっちはどうなんだ」
「……あー」
木崎は昔から俺の恋沙汰に興味津々だ。
何でも、自分は真っ当な人生しか歩めない人間だから、俺のように情のない男女交際は理解出来ず、故に非常に興味が湧くらしい。
勤勉で知識に貪欲な木崎らしい。
「なんだ、遂に誰か孕(はら)ませたか?」
「生憎、それ以上のビッグニュースがある」
「なんだよ、勿体ぶんなよ」
木崎は爽やかな笑顔から一転、口角の端をニヤリと引き上げる。
俺は一口ビールを流し込むと、徐ろに口を開いた。
「好きな人が出来た」
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