【10】彼女に言えない事がある

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「木崎は相変わらず忙しいみたいだな」 「まぁな。最近やっとプロジェクトを任せてもらえるようになったよ」 「もう人の上に立ってるのか」 「あぁ。お陰でろくに寝る暇もないけど、今日は先方に会食をドタキャンされてな。そこで急遽、お前を飲みに誘ったという訳だ」 爽やかな笑みは木崎の武器だ。 「コンサルタント」という職業は、木崎にとっての天職であると言えるだろう。 「ところで遠山、最近あっちはどうなんだ」 「……あー」 木崎は昔から俺の恋沙汰に興味津々だ。 何でも、自分は真っ当な人生しか歩めない人間だから、俺のように情のない男女交際は理解出来ず、故に非常に興味が湧くらしい。 勤勉で知識に貪欲な木崎らしい。 「なんだ、遂に誰か孕(はら)ませたか?」 「生憎、それ以上のビッグニュースがある」 「なんだよ、勿体ぶんなよ」 木崎は爽やかな笑顔から一転、口角の端をニヤリと引き上げる。 俺は一口ビールを流し込むと、徐ろに口を開いた。 「好きな人が出来た」
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