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「あの、女泣かせの遠山に、好きな人だと……? その子はなんだ、妖精か、天使か?」
「さすがは優秀なコンサルタントだな」
「は?」
「彼女は天使だ、間違いない」
「……ぶ、ぶはッ、ははッ! なんだよ遠山、お前いつからそんな乙女キャラになったんだよ! 面白すぎるだろ」
「光栄です」
「あー腹いてぇ」
ツボにハマったらしい木崎は、その後も笑い涙の溜まった目で俺の無表情を窺っては、ヒーヒー笑っていた。
「あー、今日はなんていい日だ」
笑いの余韻を引きずりつつ、木崎は大きく息を吐くと、半分程になったグラスを差し出す。
「よかったな」
「……ありがとう」
再びキン、と音を立てたグラス。
木崎は中の金色を一気に飲み干すと、今日は俺の奢りだ!と豪快に笑い、二杯目のグラスビールを頼んだ。
木崎 悠人(きざき ゆうと)という人物と出会えた事は、俺の人生の中での貴重な幸福のひと欠片だと、今改めて思う。
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