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「今でも忘れねぇよ。遠山と初めて話した時のこと」
木崎は徐ろに顔を上げると、やはり額に手の甲を付き、目の前の金色を眺めながら語る。
「あの頃の俺は大学デビューも同然で、浮かれまくってて。嫌がるお前から無理やり名前を聞き出して、連呼して。そしたら……」
「いや、俺も悪かった。先に理由を言えばよかった」
「軽々しく言えるような内容じゃねーだろ。ただお前には悪いけど、あれがあったから俺はお前と仲良くなれたからな、いいきっかけだったとも思ってる」
木崎はようやく額から手を下ろし、緩やかに微笑む。
そして徐ろに顔を上げ、俺を見据えた。
「ハルキ」
完全なる不意打ちに、言葉を失った。
ひと時固まった空気を先に割ったのは……「ふ、」と木崎の吹き出す声。
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