【10】彼女に言えない事がある

9/41
前へ
/678ページ
次へ
「はははッ! 今更過ぎて違和感しかねーわ!」 「……一瞬ドキッとしたじゃねーか、くそ」 「はは、俺のテクもなかなかだろ?」 その屈託のない笑顔に、俺の頬も自然と緩む。 「傍から見たら俺らゲイだな」 「遠山となら悪くねーな」 「生憎、俺は彼女一筋だ。ごめんなユウト」 「ちょ、やめろよ、ドキッとしただろ! しかもノロけてんじゃねーよ!」 「はは」 男同士の友情なんて、本気半分、冗談半分だ。 しかしこのラフな割合が、俺たちには丁度良い。 「なんつーか、雰囲気も変わったな、遠山」 「そうか?」 「あぁ、丸くなったよ。すごいな、その彼女。今度会わせろよ」 そう言われて、ふと考えた。 木崎と彼女を会わせるのは構わないが、間違っても彼女は俺の恋人ではない。 そんな中で友人を紹介されても、彼女は反応に困ってしまうのではないだろうか。 「……その時がきたら、な」 いつか教授と話した時と同じ、曖昧な答えを返しておいた。
/678ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6455人が本棚に入れています
本棚に追加