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赤信号に捕まると、チラリと彼女の様子を伺った。
目を丸くしてこちらを見つめる彼女と、視線が交わる。
頬は赤く染まり、口元は小さく歪んでいる。
その何とも言えない表情に誘われて、俺の中の黒い部分が顔を出す。
早く。
そう急かすように、彼女に笑顔を向けた。
「は……はる、き、さん」
辿々しくも、確かに小さく呟いた彼女は、手で顔を覆う。
恥ずかしさのあまりか、目尻には涙が滲んでいた。
ーー何だろうか、この感覚は。
耐え切れなくなって、俺はハンドルに腕を付き、そこに顔をうずめた。
顔がにやけて、止まらない。
世の中には、こんなにも可愛い生き物が存在していたのかとさえ、思う。
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