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「そんなの引き戻せばいいだけだろ。何が足かせになってるんだ?」
「それがなー……」
俺はグラスを覆う汗の粒を手で払い、数十分ぶりのアルコールを喉に流す。
味の薄まったビールはやはり……不味い。
「十夜が彼女に本気になりやがった」
「ぶはッ!!」
木崎はこれまた数十分ぶりに、盛大な吹き出しを見せてくれた。
「十夜って、義理の弟だよな!?」
「あぁ。クソ生意気な可愛い弟だ」
「それ、遠山への当て付けとかじゃねーの?」
「きっかけはそうだったんだけどな。彼女の天使っぷりに、十夜はまんまと落ちてしまったというわけだ」
かく言う俺も、まんまと落ちた側の人間なので、偉そうなことは何も言えないが。
「そんな少女漫画みたいな展開あるかよ……」
「こっちが言いたい」
意地悪なカミサマは、この物語が終焉を迎えるまで、その性格を正すつもりはないだろう。
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