【10】彼女に言えない事がある

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「そんなの引き戻せばいいだけだろ。何が足かせになってるんだ?」 「それがなー……」 俺はグラスを覆う汗の粒を手で払い、数十分ぶりのアルコールを喉に流す。 味の薄まったビールはやはり……不味い。 「十夜が彼女に本気になりやがった」 「ぶはッ!!」 木崎はこれまた数十分ぶりに、盛大な吹き出しを見せてくれた。 「十夜って、義理の弟だよな!?」 「あぁ。クソ生意気な可愛い弟だ」 「それ、遠山への当て付けとかじゃねーの?」 「きっかけはそうだったんだけどな。彼女の天使っぷりに、十夜はまんまと落ちてしまったというわけだ」 かく言う俺も、まんまと落ちた側の人間なので、偉そうなことは何も言えないが。 「そんな少女漫画みたいな展開あるかよ……」 「こっちが言いたい」 意地悪なカミサマは、この物語が終焉を迎えるまで、その性格を正すつもりはないだろう。
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