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「春樹さん」
サラリと呟かれた、完全なる不意打ち。
打たれたように、不覚にも早足になる鼓動。
「なに?」
動揺を悟られないよう、微笑を含ませながら応えた。
すると彼女はポカンとした表情で、俺の横顔を見つめた。
「いま、呼ばれたから」
「……あ」
どうやら彼女自身、無意識の中で呟いてしまったらしい。
そう思うと、何故か少し悔しくて
「すみませ――」
「俺はもっと呼んで欲しいんだけど」
俺の中の黒い部分が、再び疼いた。
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