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一瞬だけ彼女に向けた視線には、自覚がある程の圧が含まれていた。
その意図は、彼女の意志で俺の名前を呼んで欲しかった
ただ、それだけ。
「……春樹さん」
そして彼女はそれを、叶えてくれた。
やはり辿々しくも、今度はハッキリと俺の名を呼んでくれた。
正直言って、言わせたに近い。
本当に俺は大人気ない。
それでも満たされた感情には抗えなくて、笑みがこぼれる。
「よく、できました」
名前を呼ばれる、たったそれだけの行為でも
俺の心はこんなにも簡単に満たされてしまう。
彼女の破壊力が凄いのか、それとも俺が、安いのか。
どちらにせよ、恋愛事に疎くなっていたツケがこんなところで回ってきたのだった。
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