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最初は申し訳無さそうに俺の半歩後ろを歩いていた彼女も、次第にちょこちょこと自ら動き始める。
その表情も、少しずつくだけていく。
時折見せる穏やかな表情が、殊(こと)の外、可愛くて。
彼女にならば金なんて幾らでも惜しみなく使ってやりたいと、真面目に思う。
……これではキャバ嬢の魅力に囚われて、いそいそと金を貢ぐ馬鹿な男となんら変わりない。
けれどそんなくだらない考えさえも、今の俺には心地良い。
「あの……」
彼女は婦人服売り場で足を止めた。
気まずそうに俯いて、その視線はキョロキョロと床を泳ぐ。
その姿に、あぁ、と悟った俺は、自分の財布から紙切れを2枚取り出す。
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