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『遠山くんもさー、早く結婚しちゃいなよー! あの美人の受付嬢とはどうなったの?』
「あぁ、とっくに別れました」
『えぇ!? 勿体無い! なんでそうやってすぐ別れちゃうのかなー』
振られるのだから、仕方が無い。
もちろん、振られる原因が俺にある事も、分かっている。
所詮、相手の女だって俺の容姿に興味があって、付き合いたいと言ってくるのだ。
俺に近付いてくる女は大抵、男を自らのスキルのように、自らを輝かせる為の装飾品のように捉えている。
けれどそれは俺にとっては寧ろ有り難く、好都合だった。
人間とは、そして男とは特に不便なもので。
本能である性の欲求を、自らと切り離して生きて行く事は出来ない。
だから俺は、女と付き合う。
欲求を満たすだけの為に。
愛情なんて、そこには微塵にも存在しない。
本当にクズな人間だと、自分でも熟(つくづく)思う。
『うかうかしてたらすぐ30歳迎えちゃうんだからさー! 誰かいないの? いい子』
「そうですね……」
俺を心から満たしてくれる人など、現れる訳が無い。
――そう思っていた。
少なくとも、昨日までは。
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