【3】これが性悪な俺のやり方

28/44

6449人が本棚に入れています
本棚に追加
/678ページ
チラリと時計を確認すると、彼女と別れた時間から既に25分が経過していた。 本当は彼女がいつ買い物を終えてもいいように、すぐに待ち合わせ場所に戻る予定だったが……まぁ仕方が無い。 教授との電話は、いつも何かと長くなってしまう。 気持ち早足で向かうと、待ち合わせ場所のベンチには、4、5歳ほどの幼い女の子が座っていた。 俯き、何やらメソメソと涙ぐんでいる。 その向かいにしゃがみ込み、語り掛けているのは、ウサギの彼女。 その横顔に、ドキリとした。 彼女が、柔らかくも美しく、微笑んでいたから。 察するに、女の子は迷子というやつなのだろう。 正直、子供は得意ではない。 あどけない、キラキラとした目を向けられるのは、どうも苦手だ。 「優愛」 「と……春樹さん」 いま遠山さんって言いかけただろ、と問いたくなるのを我慢して、笑顔を作る。
/678ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6449人が本棚に入れています
本棚に追加