6449人が本棚に入れています
本棚に追加
/678ページ
チラリと時計を確認すると、彼女と別れた時間から既に25分が経過していた。
本当は彼女がいつ買い物を終えてもいいように、すぐに待ち合わせ場所に戻る予定だったが……まぁ仕方が無い。
教授との電話は、いつも何かと長くなってしまう。
気持ち早足で向かうと、待ち合わせ場所のベンチには、4、5歳ほどの幼い女の子が座っていた。
俯き、何やらメソメソと涙ぐんでいる。
その向かいにしゃがみ込み、語り掛けているのは、ウサギの彼女。
その横顔に、ドキリとした。
彼女が、柔らかくも美しく、微笑んでいたから。
察するに、女の子は迷子というやつなのだろう。
正直、子供は得意ではない。
あどけない、キラキラとした目を向けられるのは、どうも苦手だ。
「優愛」
「と……春樹さん」
いま遠山さんって言いかけただろ、と問いたくなるのを我慢して、笑顔を作る。
最初のコメントを投稿しよう!