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……上目遣いは、ずるいな。
あの可愛さは、異常だ。
計算か? 計算なのか?
ここまでくると、疑いたくなる。
俺は動揺から速くなる鼓動を誤魔化したくて、歩みのスピードを上げる。
不甲斐無い。
大の大人が少女にも近い年下の彼女に、こんなにも簡単に惑わされるなんて。
それに……あの微笑み。
俺にはまだ一度も向けられていない、無垢で柔らかな、作られていない笑みだった。
じわり、じわりと微かに灯る、大人げない嫉妬心。
彼女は大分俺に慣れてきてくれたものの、その笑顔を引き出すにはまだまだ時間が掛かりそうだと思っていた、のに。
あの小さな女の子は、いとも簡単に成し遂げてしまった。
……。
いや、やめよう。
こんなくだらない感情は、彼女にとって有害以外の何モノでもない。
とにかく今は女の子の母親を探すこと、それが最優先だと気持ちを入れ直し、大きく息を吐いた。
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