【3】これが性悪な俺のやり方

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母親は俺達に再三深々とお辞儀をすると、女の子の手を引いて帰っていった。 「おねーちゃん、おにーちゃん、ありがとう」 そう、恥ずかしそうに呟いていった女の子に、彼女はあの微笑みを返す。 そして二人の姿が見えなくなった後、ゆっくりとこちらに向き直った。 「春樹さん、ありがとうございました」 「……いや、見つかってよかった」 俺が親切心を働かせたのは、母子のためではない。 早く母親を見つけて、彼女を安心させたかった。 彼女に、ありがとうと言ってもらいたかった。 不純すぎるその動機に、彼女は全く気付いていない。 俺を、親切で優しい人間だと思い込んでいる。 それは、俺にとって幸か不幸か。 ……どちらにせよ、今の俺は満たされているのだから、まぁ良しとしよう。
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