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買い物を終えて、車に乗り込む。
昼前には家を出たというのに、春待ちの空は既に深い紺青に包まれていた。
彼女は俺に何度も何度も頭を下げて、礼を言う。
飽きるほど聞いたはずなのに、何度向けられても、不思議と心地良い。
「楽しかったな」
独り言のように、呟いた。
「……はい、とても」
彼女も、賛同してくれた。
どうやら彼女もそれなりに楽しんでくれたようだ。
「あの……お高かったですよね?」
思っていた通り、彼女はやはり金のことを気にしていた。
「だから気にするなって」
「でも、人様のお金を、その……」
「いいから」
「……はい」
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