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彼女はしゅんと黙り込む。
優しく言いくるめたつもりだが、彼女は納得していない様子だ。
まぁ、無理もない。
彼女のすぐ後ろ、つまり後部座席は、後方の視界を遮らんばかりの荷物で埋め尽くされているのだから。
「お仕事は何をされてるんですか?」
彼女の疑問はごく自然なもので、そろそろ問われるだろうと思っていたところだった。
「助教だよ。大学の。いわゆる『助手』ってやつかな」
「……え?」
その反応も、ごくごく自然。
「意外?」
「あ、いえ、社長さんか何かなのかなって思っていたので……」
彼女はそこまで言って、はっとしたように目を見開いた。
横目でも分かる、彼女の動揺。
その素直さが可愛くて、やはり、にやける。
「俺が?なんで」
「いえ、あの、失礼かもしれないですが、お家も車もすごく高そうですし、さっきの買い物も……」
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