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そこまで言うと、彼女は俯いてしまった。
朝と同じ。
俺は、彼女にそんな顔をしてほしい訳ではない。
「俺の親父は、確かに社長だよ」
俺は普段、誰かに自分の話をする事は無い。
気の置けない友人と教授に限っては、それなりに話してもいるけれど。
単純に、自分を知って欲しいと思える相手がいなかったという事もあるが、それ以上に、俺の中に土足で入り込むことを許したくなかった。
深入りされるのはこの上なく面倒で、気分が悪い。
なのに、今の俺ときたら。
彼女を安心させたい、その理由一つでこうもベラベラ喋ってしまう。
ただ一つ抵抗があるとすれば、俺は親父の脛を今も齧って生きている、気楽なボンボンだとは思われたくない、という事。
つまり、カッコつけたいだけ。
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