【3】これが性悪な俺のやり方

36/44

6449人が本棚に入れています
本棚に追加
/678ページ
そこまで言うと、彼女は俯いてしまった。 朝と同じ。 俺は、彼女にそんな顔をしてほしい訳ではない。 「俺の親父は、確かに社長だよ」 俺は普段、誰かに自分の話をする事は無い。 気の置けない友人と教授に限っては、それなりに話してもいるけれど。 単純に、自分を知って欲しいと思える相手がいなかったという事もあるが、それ以上に、俺の中に土足で入り込むことを許したくなかった。 深入りされるのはこの上なく面倒で、気分が悪い。 なのに、今の俺ときたら。 彼女を安心させたい、その理由一つでこうもベラベラ喋ってしまう。 ただ一つ抵抗があるとすれば、俺は親父の脛を今も齧って生きている、気楽なボンボンだとは思われたくない、という事。 つまり、カッコつけたいだけ。
/678ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6449人が本棚に入れています
本棚に追加