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ファミレスに入り、彼女にメニューを差し出した。
彼女は躊躇いながらもそれを受け取ると、ペラペラとページを捲る。
女と食事を共にするだなんて、何時ぶりだろうか。
買い物同様、行き当たる記憶は無い。
「優愛、嫌いな食べ物は?」
何気なくそう問うと、彼女は頬を緩めてふわりと答える。
「特にないです。おばあちゃんには何でも食べないと大きくなれないって言われてましたから」
そう言い終えた彼女の表情に、翳りが落ちた。
引き金は恐らく、『おばあちゃん』という単語だろう。
彼女の口から家族と思わしき人物の名前が出てきたのは、これが初めてだった。
母親や父親ではなく、『おばあちゃん』の名前が出てきたことで、彼女の境遇についての仮説が何パターンか生まれた。
けれどそれはどれも、温かいモノでは無い。
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