【1】彼女は天使か、堕天使か

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差していた傘を、そっと彼女へ傾ける。 目の前の彼女は、思ったよりもずっとか細く、弱々しい。 今にも溶けて、消えてしまいそうだった。 どうか、目を開けて 俺の存在に、気付いて欲しい。 呼応するかのように、彼女はそっと瞼を上げた。 隙間から覗く色を無くした瞳は、いつかの記憶を蘇らせる。 絶望に近い闇、亡失、無。 俺はこの目をよく知っていた。
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