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それまでの俺の日常は、朝の憂鬱な気分から始まっていた。
俺はいつもの様に、大学へ向けて車を走らせる。
そしていつもの様に適当にラジオを選んで、聞き流す。
今日の俺が選んだ番組は、陽気なパーソナリティがキャッチーなJ-POPを紹介する歌番組。
……そこで気が付いた。
俺は、相当浮かれているのだという事に。
「手料理、か」
自らの意志をあまり見せない彼女が、譲りたくないと強く願い出た。
朝食と夕食を、作りたいと。
彼女は料理が得意なのだろうか。
もしそうだとしたら、若いのに大したものだ。
まぁ別に、不味くても構わない。
俺の為に彼女が何かをしてくれるという事実だけで、正直腹は満たされる。
車内を取り巻くアップテンポに誘われているのか、今日はやけに頬が緩む。
「教授、今日は早く帰らせて下さいね」
意味もなくそう呟いて、念を送っておく事にした。
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