【4】今の俺なら、君を上手に愛せるだろうか

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研究室に着くと、いつもの様に施錠された扉に手を掛ける。 が、今日の扉は何故か、ガラッという音を立ててスライドした。 「きたー! おはよー遠山くんっ!」 「……教授、珍しく早い出勤ですね」 「そりゃそうだよー! 遠山くんに聞きたいことがあるからねっ!」 あぁ、そういう事か。 すっかり忘れていた。 「それで、それで!? ウサギちゃんについて聞かせて!」 「お伝えしたとおりですよ。ウサギを拾ったんです」 「だからー! それは一体どういうことなんだい?」 教授は、俺がこの大学に入学したその年に赴任してきた。 気が付けばその付き合いは、もう8年にもなる。 教授のゼミに入ったことがきっかけで、学生の頃から割と親しくしてもらっていた。 教授の真っ直ぐ過ぎる性格に、最初は戸惑いがあった。 けれど屈託のない笑顔と考えに、俺のひん曲がった性格は、少しずつ緩和されていくようだった。 言うなれば、教授は俺の理学療法士。 欠落した俺の人間性を、修復してくれた人。 心から、感謝している。
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