6449人が本棚に入れています
本棚に追加
/678ページ
研究室に着くと、いつもの様に施錠された扉に手を掛ける。
が、今日の扉は何故か、ガラッという音を立ててスライドした。
「きたー! おはよー遠山くんっ!」
「……教授、珍しく早い出勤ですね」
「そりゃそうだよー! 遠山くんに聞きたいことがあるからねっ!」
あぁ、そういう事か。
すっかり忘れていた。
「それで、それで!? ウサギちゃんについて聞かせて!」
「お伝えしたとおりですよ。ウサギを拾ったんです」
「だからー! それは一体どういうことなんだい?」
教授は、俺がこの大学に入学したその年に赴任してきた。
気が付けばその付き合いは、もう8年にもなる。
教授のゼミに入ったことがきっかけで、学生の頃から割と親しくしてもらっていた。
教授の真っ直ぐ過ぎる性格に、最初は戸惑いがあった。
けれど屈託のない笑顔と考えに、俺のひん曲がった性格は、少しずつ緩和されていくようだった。
言うなれば、教授は俺の理学療法士。
欠落した俺の人間性を、修復してくれた人。
心から、感謝している。
最初のコメントを投稿しよう!