【4】今の俺なら、君を上手に愛せるだろうか

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教務課に書類を提出し、研究室へと戻る。 窓の外には薄闇がかかり、壁掛け時計の針を見ては、逸る気持ち。 「教授、キリがいいので今日は帰らせて頂きます」 「はーい! ありがとねー遠山くん。春休み期間なのに」 「いいえ。私が休めば休むほど、仕事は増えていく一方ですから」 「あぁ、爽やかな嫌味だねー!」 教授は目尻にしわを寄せて、柔らかな笑顔を俺に向ける。 この会話には、毒がない。 気心知れた関係だからこそ、通じる冗談。 「では、お先に失礼します」 「はーい! ウサギちゃんによろしくねっ!」 デスクからひらひらと手を振る教授に軽く会釈をして、俺は研究室を後にした。
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