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帰宅ラッシュの時間帯にも関わらず、車は渋滞に捕まる事も無く、順調に進んでいく。
そして彼女に伝えた時間よりも30分程早く、家に着く事が出来た。
出勤時に密かに送った念が通じたのだろうか。
もしくは、今日のカミサマはご機嫌なのだろうか。
何にせよ幸運な事には代わりは無く、だらしなくも口元が緩む。
車を出て、徐々に増していくのは逸る気持ち。
最早エレベーターを待つ時間さえももどかしい。
彼女は本当に、夕食を作って待っていてくれているのだろうか。
そもそも、買い物はちゃんと出来たのだろうか。
迷子になって、どこかで困ってはいないだろうか。
……家を出て、そのまま居なくなったりはしていないだろうか。
様々な憶測が頭を行き交っては、目を瞑る。
彼女がいつ消えてもいいようにと、自制を掛けていたはずなのに
俺は既に、彼女が俺の元から居なくなる事に、恐れを感じている。
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