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「あっあのこれは! いまお肉焼こうと思ってて、それで……!」
慌ててフライパンを背中に隠して、オロオロとする彼女が
余りにも、余りにも、可愛らしくて。
「……ははっ、優愛、面白いな」
思わず吹き出してしまった。
彼女の反応一つで、俺の冷え固まった感情はこんなにも容易く溶かされてしまうのか。
「……ただいま」
未だ余韻が抜けない顔は、だらしなく歪んでいるに違いない。
それでもこの言葉を、一番に伝えたかった。
「お……おかえり、なさい」
彼女は頬を染めて、戸惑うように俯きながら呟いた。
途端に俺の中は満足感のみに支配されて、緩んだ頬が更に緩むのを感じた。
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