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風呂から上がって、リビングへと向かう。
ドアを開けると同時に、ふわりと舞い込む和の香り。
「あ、どうぞ座って下さい。今ごはんよそいますね」
「……あぁ」
キッチンからひょっこりと顔を出した彼女に促されるまま、俺はダイニングテーブルの椅子を引いて、座った。
「どうぞ」
「あぁ、ありがとう」
コト、と小さな音を立てて目の前に置かれたのは、程よく白米が盛られた茶碗。
彼女は同じように、向かいの席に小盛りの茶碗を置く。
「ちょっと、作りすぎちゃいました」
彼女は眉尻を下げてそう微笑むと、向かいの椅子を引き、腰を下ろす。
ーー俺は半ば、夢見心地だった。
そもそも自宅で誰かと食事を共にするという状況に対して、耐性がない。
更に目の前に広がる、想像以上の料理の出来栄え。
まさに、虚を衝かれた気分だった。
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