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「何度も言うけど、迷惑になんかならないからな」
誰かに頼られたいだなんて、大人になってから、一度たりとも思った事はなかった。
俺はきっと、方法を間違えてしまうから。
過ちを犯すのは怖いから。
だから無意識のうちに遠ざけて、諦めて、虚無感の中で生きてきたのだ。
彼女を救うだけじゃ、足りない。
もっと、彼女の悦びを見出してあげたい。
精一杯に甘い優しさで、彼女を包み込んでしまいたい。
「こんなに温かくてうまい晩メシ、いつぶりだろう」
人を好きになるという事は、こんなにも温かい。
満たされては、もっと、もっとと欲が出る。
子供の俺は、それにセーブを掛けられなくて、失敗した。
――今の俺なら、君を上手に愛せるだろうか。
そんなバカげた淡い期待さえ、抱きたくなってしまう。
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