【5】独占欲は、どこまでも俺を黒くする

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「優愛」 愛しいその名を呼ぶと、長い髪を揺らして君は振り返る。 見開かれた目に映っているのは、この世界を彩る無数のピンク。 「講堂、こっち」 声を掛けると、みるみるうちにその表情は柔らかく変化していって 比例するように疼く、俺の中の欲情。 「春樹さん!」 俺の名を呼んで、微笑みながら駆け寄ってくる彼女は 汚れを知らない、真っ白なウサギ。 「大学まで迷わず来れたのに、構内で迷ってたら意味ないだろ」 「本当ですね。危うく通り過ぎてしまうところでした」 ピンクに染まった頬を見て、本当に綺麗だと思う。 君は真っ白なキャンバスだ。 これからそこに、無数の色が乗せられる。 彩られたキャンバスは、より一層美しさを増して、生きていく。 ――そんな未来を想像しながら、彼女の顔を覗き込んだ。
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