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「それより、顔が赤いけど何かあったのか? 風邪か?」
俺の問いかけに、彼女は更に頬を染めて否定した。
……そんな反応をされたら、疑わずにはいられない。
まさか、もう誰かに言い寄られたのだろうか。
こんなにも可愛らしいのだから、それも十分に有りえる。
けれど残念ながら、今は問いただしている時間もない。
もうすぐ式が始まる。
俺は彼女と一言二言会話を交わした後、急ぐように促した。
そして慌てた彼女が俺の横を通り抜ける、その瞬間
ふわりと舞った香りに、俺の自制心がゆるりと解かれた。
「優愛」
再びその名を呼ぶと、先程と同じように、彼女は長い髪を揺らして振り返る。
「スーツ、似合ってる。……可愛いよ」
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