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そんな俺の姿を見て、彼女は更に顔を引きつらせると、足早にその場を去った。
小さな後ろ姿が視界から消えるまで、俺は1秒たりとも目を逸らせない。
――もう、何から何まで、彼女に意識を囚われている。
彼女の前では否が応でも、自分の在るべき姿を保っていられない。
こんな間の抜けた顔、絶対誰にも見せられないな。
特に……教授。
あの人の事だ、ここぞとばかりにからかってくるに違いない。
そして彼女に余計な事を吹き込むに違いない。
俺と彼女に接点があるという事は、絶対に気付かれないようにしなければ。
そんな事を思いながら、彼女が消えていった講堂の入り口を眺めていた、その時だった。
「てめーでもそんな顔するんだな」
柔らかな空気を裂くような、凛と響く低い声。
横に感じる、痛いほどの敵視を辿った。
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