【5】独占欲は、どこまでも俺を黒くする

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「名前を呼ばせるほど、特別な女なのか?」 ……そんな事まで、知っているのか。 親父の口の軽さには困ったものだ。 俺が他人に名前で呼ばせないのには、ちょっとした情けない理由がある。 その理由を十夜が知っているならば、現状、ヘタな言い訳は通用しないだろう。 「意外だな。てめーはあーゆータイプの女が好きなのか」 十夜はニヤリと笑みを浮かべ、彼女が消えて行った講堂の入り口へと視線を移す。 その不敵な横顔を見て、直感した。 「もしかして、彼女と今まで一緒にいたのか?」 「さぁな」 やはり不敵な笑みを崩さない十夜に、確信を得た。 彼女が頬を染めていた理由は、十夜の所為か。 十夜は俺を怒らせたくて、わざと感情を逆なでするような言葉を選んでいる。 そして弱みを握るべく、俺の反応を窺っている。 それを分かっていても、沸き上がってくる苛立ちを抑えられない理由は 餌にされたのが、彼女だったから。
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