【6】君を縛り付ける為の約束を

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「あー担任なんてめんどくさいよー! 遠山君、代わりに行ってきてよ、教室」 「つべこべ言わずさっさと行って、せめて初日くらいは担任らしい事してきてください」 「はぁーい。じゃ、いってきまーす」 背中を丸めながら嫌々研究室を出て行く教授を見送ると、再びパソコンの画面に視線を戻す。 今日も教授のボヤキは快調だ。 教授が担任を嫌がる理由は、単純に研究の時間が潰れるのが嫌なだけであって、そこに悪意はない。 なんだかんだ言いつつも、教授は人間が好きなのだ。 実際、俺のプライベートに教授がやたらと口を出してくる辺りを見ても、一人の人間に掛ける情の厚さは人並みより上だろう。 だから時折吐かれる黒い本音も、不思議と綺麗な色をしている。 教授自身は白い人間であるという事の、揺るぎ無い証明だ。
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